common time報告~食を通して子どもの社会を広げる~

こんにちは。common代表の空田です。 先日commonの取り組みを高校で発表させて頂く機会があり、民間学童commonの特徴はなんですか?と聞かれましたので、このブログでも改めて以下で触れさせてください。

 

民間学童commonの特徴は高校でも2022年度から必修化した「探究学習」にcommon timeとして、いち早く民間学童として取り組んでいる点です。

 

そして、2023年度の最初のcommon timeのテーマは「食」。その中でも、子どもたちにとっての一大イベントは、約3ヶ月の探究学習を発表するWelcome common Dayです。民間学童commonの発表会は、普通の発表会とは位置づけが違い、子どもたちが来場者からのフィードバックをもらう場と位置付け、お越し下さる皆さまにも、子どもたちの学びに貢献してもらいます。

 

なぜならば、私たちが探究学習を進める上で私たちが大切にしている姿勢の1つに「多様な視点」があるからです。そのため、私たちは、子どもたち自身が学びを共有し、様々な人からフィードバックをもらうことが、とても重要と考えています。

また、子どもの学びの視点からすると、大好きなお父さんお母さんに話を聞いてもらったり、実験プロセスや作品を褒めてもらったりすることは、自己肯定感が高まり、次への挑戦につながると私たちは考えています。

少し専門的な話になりますが、世界には様々な探究学習のモデルがありますが、発達段理論を提唱した心理学者ピアジェの流れを踏襲したレズニック教授の「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」や、コルブの「経験学習モデル」、コルブの「経験学習モデル」、そしてイエナプランの「ヤンセンの自転車」など、どれを見ても共有する大切さ、そしてフィードバックをもらう大切さには触れています。

また、保護者の皆さんもよく耳にするPDCAモデルはチェック(C)がここに当ります。

 

このように、学びの共有と多様な人々からフィードバックをもらうことを大切にしているWelcome common Dayは、保護者様だけでなく、流れ山おおたかの森の地域に住む皆さんにも開放しています。おおたかの森の地域の人たちに学びを解放することで、より多くの視点からのフィードバックが得られ、民間学童commonの子どもたちの学びにプラスの効果を与えてくれると考えています。

今回の探究学習プログラム「common time」のテーマは「食」

Welcome common Dayでは、民間学童commonの探究学習プログラム「common time」で3ヶ月取り組んだ「食を通じて子どもたちのセカイを広げる」の概要の紹介が行われました。

 

common timeでは1つのテーマをハブにして、子どもたちは各曜日の視点で体験的に遊びながら学んでいきます。 探究学習を進める上でのキーワードは「自分事化」、そのため、今回のテーマ「食」は子ども達にとっても普段の生活に寄り添うものでした。加えて、食から広がる学びの領域は、仕事、文化、コミュニケーション、科学など多岐にわたるため、学びの幅も多く持つことができるため、今回はこのテーマを選びました。

 

また、民間学童common10週間の探究学習プログラム「common time」の第1週には、流山おおたかの森や柏などなるべく近隣地域でそのテーマを楽しんでいる大人(マスター)に登場してもらうことが多いです。 

 

マスターに登場してもらう理由は、民間学童commonが大切にしている姿勢に「大人の背中」があるからです。保護者さんも普段お子様と接していると「〇〇になりたーい」という言葉をよく聞くのではないでしょうか。このように子どもたちに憧れの存在であるマスターとオンライン/オフライン問わず接してもらうことで、その時のテーマへの子どもたちの好奇心に火をつけ、学びをより深いものにしていきます。教育心理学者ブルーナーの『教育の過程』では、様々な大人との関わることで深まる学びについて記載がありますので、ぜひ皆さんも一度目を通してもらえればと思います。 

 

さて、今回のテーマ食のマスターは、流山おおたかの森のお隣の柏でレストランを経営する日高さん。日高さんは学校卒業後には学習塾を運営したり、就労支援のための教室を開いたりと、人を育てることに情熱を注ぎ、今は大人のためのレストランを経営し、柏や流山おおたかの森の地域の集いの場を提供しています。

common time1週目は「食」のマスターが登場

1週目はそんな日高さんに「食」のマスターとして子どもたちの前に登場頂き、様々な料理のイラストを使いながら、日本ではたくさんの料理が食べられること、そしてそれらが世界で生まれたものであることを楽しくお話して頂きました。

 

自分の好きな料理が外国のものだと知って驚く子ども達、様々な食材が使われて料理ができること、その食材には、様々な栄養があることを知り、食や料理、材料に興味を持つ子ども達。様々なテーマで行うcommon time。興味を持っているテーマ、初めて出会うテーマなど、たくさんの経験がこの日からスタートしました。

 

 

シェフの格好で現れた日高さんを見てワクワクする子ども達。日高さんは様々な料理のイラストを使いながら、日本ではたくさんの料理が食べられること、そしてそれが世界で生まれたものであることを楽しくお話ししてきました。自分の好きな料理が外国のものだと知って驚く子ども達、様々な食材が使われて料理ができること、その食材には、様々な栄養があることを知り、食や料理、材料に興味を持つ子ども達。様々なテーマで行うcommon time。興味を持っているテーマ、初めて出会うテーマなど、たくさんの経験がこの日からスタートしました。

1つテーマを様々な視点から学ぶcommonの探究学習

民間学童commonの探究学習プログラムの大きな枠組みは、1つのテーマを様々な視点から子どもたちの好奇心の種を基にチームで学んでいけることです。

これは探究学習が螺旋型の学びと言われるように、それを軸に周辺のことを連鎖的に学んでいくことを意図しています。加えてチームで学んでいくことは、私たちの学びに対する考えが、対話の中で答えを生み出していくことを重視する、社会構成主義的な学びを大切にしているからです。

 

さて、今回のcommon timeでは「食」について「国際(月曜)」「アート(火曜)」「サイエンス(水曜・木曜)」「キャリア(金曜)」という視点で学びました。

 

ここからは、それぞれの曜日でWelcome common Dayまでの9週間、どのような活動を行ってきたかを簡単ではありますが、書いていきます。

メニューの数だけ文化がある「国際(月曜日)」

日本は世界でも有数の食の豊かな国です。日本食の多様性はもちろん、世界中の様々な料理を気軽に食することができます。そんな子どもたちもよく知っている料理を起点に、その料理の生まれた国を探り、その国について調べ学習を通じて学びを深めてきました。

 

何かを決めるプロセスも民間学童commonでは、コミュニケーター(大人)が決めるのではなく、子どもたちの声を大切にしています。今回もそうすることで、子どもの参加意欲もぐんぐん高まっているのが印象的でした。ただ、まだまだ小学1・2年生が大半のため、どう自分たちの興味のある国について調べたらいいかなかなかわからないので、インターネットや図書館で私たちが大量に借りてきた本をどう使っていくかなどの調べ方について学んだりもしました。グループで色々と調べていくなかで、自分たちが興味のある表現方法でWelcome common Dayの来場者に伝えることにしました。あるグループはブラジルを表現するのにサッカーのユニフォームを工作して伝えるなどとてもユニークな方法を考えているグループもありました。

 

これからは多様性があふれる社会では、自国だけでなく、他国についての知識を持つことは、多様な文化、価値観を受け入れるための基礎となります。そしてその興味のきっかけを身近なテーマから持つことで、普段の生活で出会ったものから少しでも世界を考えだしてもらえたら私たちとしては嬉しいです。

食は文化伝承の証「アート(火曜日)」

人は食事という行為を単なる栄養補給と捉えてはおらず、人と人のコミュニケーションの場、文化伝承の場として育んできました。そこには味だけでなく、五感で楽しめるような様々な工夫がなされています。料理が書かれたイラストから、子どもたちは実は料理に合わせて色々なお皿が描かれていることに気付き、アートのテーマでは、ハレの日の食事をテーマに、グループごとに設定したイベントにあったテーブルコーディネートを工作表現することになりました。

 

プロセスでは、単にお皿だけではなく、お箸やクロスなどさまざまなアイテムが使われていることを、子どもたちは知り、料理と季節や行事との関係性の中で、1回の食卓が彩られていることを学びました。

 

テーブルコーディネートをグループで工作していく過程で、イメージを言葉だけで伝えあうことは大人同士も難しいこと、そのため、それぞれの「こんな感じ」について画像を見せ、伝え合い、必要な情報を取り出し要素分解し、自分たちの工作として創造していくということにも取り組みました。取り組みの過程では、生まれるお友達の作品を認め、自分の作品に活かしていくというコミュニケーションも大切にしています。

食は自然の恵みです「サイエンス_生物学(水曜日)」

食が生まれていく過程、つまり植物の育つ様子はどうなっているのか?

学校ではアサガオやトマト、ヒヤシンスなどを育てていきますが、民間学童commonでは食べられるもの、自分たちがやってみたい植物を育てることに挑戦しました。そのために市販のタネを使うだけでなく、実際に食材からタネを取り出すことから始めました。

 

ドラゴンフルーツなど、大人も見たことのない成長の過程を子どもたちと一緒にワクワクしながら観察していきました。育てる過程では、うまく育ったもの、枯れてしまったもの、それぞれありましたが、どうして枯れたのかを考えることで、次の成功の糧になります。育てる過程では、スケッチをして子どもたちの観察する眼も育み、1か月以上にわたる観察シートをつけ、グループで一冊のレポートにまとめていきました。

 

民間学童commonの探究プログラムcommon timeのサイエンスの視点の活動では、このような実験に加えて、生物の世界での役割をディスカッションするなど、自分なりの答えを創るということも大切にしています。このようにサイエンスこの経験から自然の大切さや生命についての興味を深め、自然を大切にする心を育めたらと考えています。 

毎日好きなもの、同じものばかり食べていては大きくなれないよ。「サイエンス_科学(木曜日)」

このようなことは子どもたちは頻繁に言われているのではないでしょうか。

では、いったいどういうメニューを、どう組み合わせたらいいのか。栄養という側面で食を捉えながら、その栄養を実際に調べてみるといういくつかの科学実験に挑戦しました。

 

まずは、子どもたちたちから出てきた沢山の野菜を、子どもたちと一緒に赤(タンパク質・脂質)・黄(糖質・炭水化物)・緑(ビタミン・ミネラル)に分類しました。子どもたちは、脂質・炭水化物・ビタミンの存在を確かめていく過程において、様々な実験器具の扱い方を学んだり、とにかく思いっきりペットボトルを振ってバター(脂質)取り出したり、20種類の野菜の中から仮説を立てて目的の栄養素の存在を確認したりと、科学の世界に子どもたちは遊びながら体験的に入っていきました。

 

それぞれの実験をしていくなかで、「おぉ!なんか固まってきたー!」「色が青くなったー!」など、子どもたちにとっては衝撃的なことが多かったようです。小学校低学年の段階では理論よりも体験を通じて印象を残すことを私たちcommonは心がけています。

小学校では「理科」として学んでいくであろうスキルの習得にも繋がっていきます。

 

 

ごっこ遊びを本気でやりました。「キャリア(金曜日)」

マスターの日高さんの仕事でもある飲食店の経営。子どもたちも「ごっこ遊び」の中でお店屋さんごっこをやっていることでしょう。これをcommon timeらしく、「お店開店プロジェクト」として、グループで計画を立てながら、まさに「がっつり」とやっていきました。

どんなお店にしたいのか、そのためにどんな仕事、どんな作業をしないといけないのか。来た人を喜ばせるにはどうすればいいのか。ごっこ遊びから2歩、3歩進んだ「お店屋さん」を子どもたちは3か月かけて作っていきました。

このお店開店プロジェクトでは、本当に多くのことを子どもたちは体験的に学んでいました。

 

大人的な表現でいうと、チームで行うため、誰がどのような役割をいつまでにやるのかという「プロジェクトマネジメント力」「協調性」、お客さん(保護者さん)にどう喜んでもらうかを考える「他者視点」、自分たちが理想としているお店をcommonにあるダンボールや空き箱など、おおたかの森の地域のお店から集めた廃材を、素材としてどう工夫して作っていくかの「想像力」、お客さんをどのような言葉遣いでもてなすのか、商品をいくらにしたら適切なのかを考える「社会性」を体験的に学ぶこと学んでいました。

ぜひ、ご自宅でお子さんがごっこ遊びをしている時はこのような視点で見守ってもらえればと思います。

民間学童commonで大切にしたいこと

このように、私たちがcommon timeに取り組む上で大切にしていることは、子どもたちの好奇心に火をつけ、1つの物事を多角的にチームで共に学び続け、子どもたち自身の世界が広がるように、学びの環境設定を適切にすることだと考えています。

9月後半から始まる次のcommon timeも、子どもたちの新しい発想と出会えることがとても楽しみです。

 

common 代表 空田