common time報告~災害・防災を通して社会を知る~

こんにちは。民間学童common代表の空田です。 3学期のcommontime(探究学習プログラム)での学びを、保護者の皆様や流山おおたかの森の地域の方と共に、その学びと成長を喜び合うWelcome common Day(以下WCD)が無事終了いたしました。

 

今回のWCDは、より子どもたちが前にでて、司会や発表などを実施し、子どもたちが主役となるように工夫いたしました。

 

以前のブログでも触れましたが、民間学童commonでは学び方としてアクティブラーニングを取り入れており、WCDでは自分たちが体験したことを来場者に教える(伝える)ことを大切にしています。この他者に教える(伝える)ことを大切にしている理由としては、他者に伝えることが、アメリカNTL(National Training Laboratories)が提唱しているラーニングピラミッドにおいて、平均学習定着率が約90%と言われているからです。(参考ではありますが、受け身の講義の学習定着率は5%とされており、体験や人に伝えることが、自身の中への影響が多いかが分かります)

そのため、私たち民間学童commonのWCDは準備運営から子どもたちが主体的に取り組んでいます。

 

また、今回も約9割のご家族にご参加頂き、地域の学校の先生など地域の方々にも多数ご見学いただきました。

今回の探究学習プログラム「common time」のテーマは「防災・災害」

WCDでは、民間学童commonの探究学習プログラム「common time」で約3ヶ月間取り組んだ「防災・災害を通して社会を見る」の概要の紹介が行われました。

 

common timeでは1つのテーマを学びのハブにして、子どもたちは各曜日の視点からで体験的に遊びながら学んでいきます。 探究学習を進める上でのキーワードは「自分事化」、そのため、私たちがcommontimeのテーマを選ぶ時は、なるべく子どもたちの生活に身近なモノゴトをテーマとしていきます。

今回のテーマは「防災・災害」です。阪神淡路大震災や東日本大震災など、3学期は学校・テレベビなどでも防災について見聞きする機会が多いため、生活や身近な暮らしの中で見つけた社会課題をMissionとする探究プログラムcommontimeでは3学期に災害・防災をテーマとしました。

 

そして、民間学童commonが実施する探究学習プログラムcommontimeのテーマは、セントラルアイデアという、テーマを通して子どもたちに触れて欲しい中心的な概念を設定しています。

今回は「私たちは自然と共存している。災害は自然現象のため起こるものと捉え、その上で自分たちができることを考えて幸せに生きていく術を身につけていくことが大切」という考え方を置いています。

 

 

加えて、私たち民間学童commonの育みたい5つ力の中でも「他者を理解して協働する社会性スキル」「社会に目を向ける課題発見力」に特に力を入れました。

 

それでは、これから各曜日について下記にて触れていきたいと思います。

common time1週目は「防災」のマスターが登場

1週目は防災のマスターとして、流山市消防本部の消防士さんに登場して頂きました。

消防士の方から、お仕事の話、火の取り扱い、そして危険を感じたらどう動いたらよいかなどを、実際の経験を基にお話頂きました。

3学期になってくると、探究プログラムcommontimeも3回目になるので、入学当初はあまり質問や疑問を投げかけられなかった子どもたちからもどんどんと質問がでるようになってきました。

具体的には「消化の際に梯子がとどかない場合はどうするの?」「火事のときはどうやって電話するの?」「1日どれくらいの問合せがあるの?」などの消防に関する質問があがりました。更に、「1番つらかった訓練は?」「消防士になってよかったと思うときは?」など消防士のお仕事に関する質問もあり、子どもたちも災害や災害から街を守る消防士のお仕事にとても興味を持っていました。

1つのテーマを様々な視点から学ぶcommonの探究学習

民間学童commonの探究学習プログラムの大きな枠組みは、1つのテーマを様々な視点から子どもたちの好奇心の種を基にチームで学んでいけることです。

これは探究学習が螺旋型の学びと言われるように、それを軸に周辺のことを連鎖的に学んでいくことを意図しています。加えてチームで学んでいくことは、私たちの学びに対する考えが、対話の中で答えを生み出していくことを重視する、社会構成主義的な学びを大切にしているからです。

 

さて、今回のcommon timeでは「防災・災害」について「文化・地域(月曜)」「アート(火曜)」「サイエンス(水曜・木曜)」「キャリア(金曜)」という視点で学びました。

 

ここからは、それぞれの曜日でWelcome common Dayまでの約9週間、どのような活動を行ってきたかを簡単ではありますが、書いていきます。

いざという時のために! 防災マップと防災設備づくりに挑戦したよ!「地域(月曜日)」

今回の月曜日の視点は「地域」に設定しました。「地域」は、防災・災害というテーマからは切っても切れない関係性の視点。まずは、流山おおたかの森S・C本館にある防災設備を探しました。単に見つけるだけでなく、地域で働くお店の人に場所や使い方をしっているかなどのインタビューをするなど、実際に使うであろう人たちと接しながら探しました。

見つけた防災設備についての疑問、例えば、消火器がなぜ赤いのか?、防火シャッターがなぜエスカレーター前にあるのか?など子どもたちの疑問について、大人がサポートしながら、子どもたち自身が答えを見つけていきました。

その中で、火はなぜ燃えるのかという疑問もでてきたので、ろうそくと瓶を使って、火が燃える仕組みについての実験もおこないました。

 

調べた防災設備が施設内だけでなく、外にもあるということから、防災マップ作りに挑戦するチームと、新たな防災設備(グッズ)を作るチームに分かれて、commontimeを進めていきました。

 

防災マップチームは、見る人の気持ちを考えて、どうしたら見やすくなるかを考えて、「危なそうな場所にキケンマークを入れよう」「写真を使おう」など様々な工夫を施していました。そして、地図を描く時は、実際の地図とにらめっこして位置関係や縮尺を体験的に学んでいました。

 

防災設備チームは、災害が実際におきたら夜は暗くて不安になるのではないかという困りごとから、ペットボトルをつかったアートランタンづくりに取り組みました。何色が一番明るく見えるかなどの試行錯誤を繰り返しながら、アートランタン作りに取り組んでいました。

 

えっ?避難訓練ってつまらない?それなら楽しくする方法を考えてみよう「アート(火曜日)」

火曜日のアートの視点では、今まで子どもたちの中で最も身近な防災の取り組み、避難訓練について再考をしていきました。

実際に2週目に民間学童commonで地震が発生したことを想定し、流山おおたかの森S・Cの協力を得て、実際に避難訓練をおこないました。

実際にやってみると、子どもたちからは「音が非日常で楽しい」「つまらなかった」などの感想がでたり、保育園での経験など話してくれました。

そこで、火曜日のcommontimeでは「災害を楽しく学べるようにするにはどうしたらよいか?」という問いをたて、「地震・津波・火事」をテーマにしたゲーム作りをチームで取り組みました。チーム決めは、自分が今やりたいと思った出し物を投票で選ぶという方法で決め、普段の友人関係だけではないチーム作りを意識しました。

 

地震ゲームでは地震を体験する迷路が2つ誕生しました。このゲームでは、迷路要素を取り入れたことも素晴らしいですが、地震の知識をクイズで確認しつつたどり着くというシステムが子どもたちから生み出されて、楽しみながら学ぶことができるものになりました。

 

火事ゲームでは、準備段階から話し合いの中で全員が役割を持って、ルールボードや迷路、景品づくりに取り組んでいたことが印象的でした。また、大人向け・子供向けとゲームに参加する人の立場にたち、ゲームの難易度が帰られるという、相手の立場に寄り添ったアイデアなどもありました。

 

最後の、津波ゲームでは、自分たちの興味関心でチーム分けをしたことで、11人という大チームに。もちろん意見がまとまらないこともありましたが、お互いの意見を尊重しながら制作をし、津波が実際に襲ってくるリアリティを出したいと、波の人力アイテムを作っていました。

 

子どもたちの発想は溢れますが、内輪では収束しないようにあ「お客さんにはどう伝わるかな」という声かけを行い、設定をそぎ落としたチームも見受けられました。

全てのアイデアを足し算するわけではなく、引き算の方法も考える。これもアイデアを伝える1つというこを、子どもたちは学んでいました。

 

自然災害って?気になる災害を実験で再現しよう「サイエンス(水曜日)」

 

まずは、子どもたち自身がどんな災害を知っているかをグループで話し合い、発表するところから始めました。地震や津波はもとより雪崩や隕石衝突など大人の予想を越えるものを挙がりました。中には、テロや戦争なども災害ではないのかという、最近の世の中を映し出すような発表もあり、大人も深く考えさせられる一面もありました。

 

そして子どもたちから挙がったきた多くの災害がどんな仲間か考え、「天気に関係している」「水のもの」「人が起こしているもの」など、具体と一般を行き来し、抽象概念を考えるきっかけなども作っていきました。そして、どうしたら起こさないようにできるだろう疑問では、テロ・戦争は「話し合う」「認め合う」ことが大切と子どもたちなりに考えていました。

 

ここからは、子どもたちが気になった「津波・地震」「火山噴火」「気象」の3つのグループに分かれて、事前に図鑑やインターネットで調べた上で、実験を自分たちで選び、準備をして、実際にサイエンスの視点で再現していきました。

 

実験では、

・「津波・地震」グループ➡液状化実験

・「火山噴火」グループ➡火山噴火実験

・「気象」グループ➡竜巻実験

に、取り組みました。

 

それぞれの実験では、なかなか上手くいないこともあるのですが、ある子が良い方法を発見すると自らそれをシェアして、他の子も「あ~なるほど!」と、素直に取り入れながら試行錯誤をしている姿がとても印象的でした。

 

実験後には、レポートにまとめ、気持ちを含む振り返りを行い、結果だけでなく自分自身の気持ちと向き合うことも行いました。

そのレポートを発表するためには、どのようなレイアウト・フォント・背景にすればよいかなどを、事例を見せながらまとめていきました。

 

そして、発表(WCD)直前は、発表のポイントを伝えながら、それぞれが発表の練習に取り組んでいました。

避難生活の困りごとをサイエンスの力で解決しよう「サイエンス_科学(木曜日)」

 

まずは、木曜日がサイエンスの曜日というこもあり、2種類の実験からスタート。雲を一瞬で発生させる実験と、プリンと下敷きを使った、揺れの仕組みを学ぶ実験を行いました。プリンの揺れを小さくするにはどうしたらよいかを考える、ミニMissionに取り組みながら、免振の仕組みも一緒に経験してもらい、実験と災害の繋がりの足場づくりをしました。

次は、サバイバルゲーム (避難所での想定生活)を行い、それぞれの家族(グループ)に、異なる条件が設定され、子どもたちは、足りないモノを助け合う「共助」を学んだり、いつもの生活ができない不便さを発見していました。

 

サバイバルゲームから子どもたちが感じた悩みや不便さを基に、「食料・水」「トイレ・歯磨きなどの当たり前のこと」「遊びがないこと」の3つのグループに分かれて、解決策を考えることに。

 

それぞれ、

・「食料・水」➡ポリ袋クッキングに挑戦し、避難生活でも飽きないメニュー制作

・「トイレ・歯磨きなどの当たり前のこと」➡利用できる水が少ないことに着目し、水のろ過実験を実施したり、段ボールでの簡易トイレ制作

・「遊びがないこと」➡オリジナルルールの鬼ごっこをして、心の状態を確かめる

に取り組んでいきました。

 

どのチームも、一回やったら終わりではなく、限られた条件の中、もっと上手く取組むためにはどうしたらいいかということを、スタッフに支えられながら、チームで取り組んでいる姿がとても印象的でした。

 

助け合おう!みんな社会の一員だ!「キャリア(金曜日)」

金曜日の視点はキャリアということで、最初は自分たちの街を守っている役割を担っている人やモノを見つけるところから始めました。commonの施設内だけでなく、外に出て探していく中で、警察官や街の防犯カメラなど様々なものを子どもたち自身がみつけていました。何気なく過ごしていると気づかないことも、目的をもって見てみることで、色々な発見ががあるとを学びました。

 

そして、実際に流山市を災害から守っている、流山市役所防災危機管理課の方々に、民間学童commonに来てもらい、防災について流山市役所が取り組んでいることや、お仕事についてお話を聞きました。その中で、子どもたちは、防災無線について聞いたり、非常食の管理方法について聞いたりと、それぞれの疑問をぶつけていました。

 

今回のテーマでは、共助の視点を子どもたちに知ってもらうために、ミッションはベープサートづくり(災害が起きた時に、commonから自宅に安全に帰宅するには)に取り組みました。ルールを守る人だけでなく、あえてルールを破る人などをいれたり、流山市役所の方から教えてもらった防災無線をリアルに表現したり、ひとりひとりの顔の表情にこだわったりと、子どもたちは豊かな想像力を活かした劇を作っていました。

 

本番は動画で撮影し、上映会を実施しました。その後はもちろん振り返りを行い、他のチームの良いところを見つけ合うことで、今後に活かそうという真剣な姿勢が印象的でした。

 

3学期のcommontimeについてご利用者様アンケートはこちらからご覧ください。

民間学童commonで大切にしたいこと

このように、私たちがcommon timeに取り組む上で大切にしていることは、子どもたちの好奇心に火をつけ、1つの物事を多角的にチームで共に学び続け、子どもたち自身の世界が広がるように、学びの環境設定を適切にすることだと考えています。

5月初旬から始まる次のcommon timeも、子どもたちの新しい発想と出会えることがとても楽しみです。

 

common 代表 空田