2学期のテーマは「宇宙」
2学期の民間学童commonの探究学習プログラムcommontimeのテーマは「宇宙」でした。
多くの方から「テーマをどうやって決めてるんですか?」と聞かれますが、私たち民間学童commonでは、学童に来てくれている「子どもたちの興味」はもちろん、その他にも流山という「地域性」、commonに大切なお子様を託してくださっている「保護者様の願い」、commonで子どもたちの成長を後押しする「スタッフの強み」の4つの要素を踏まえて決めています。
私たちが考える学びは社会構成主義的な学びを基礎としており、決められた教材に子どもたち・スタッフ・保護者様が合わせるのではなく、それぞれができるだけ自主的に関係性を持てるようなテーマ選びを心がけ、主体的な学びを目指しています。
そのため、今回のテーマ「宇宙」を選定した理由は、
①子どもたちの興味…子どもたちの普段の様子をみていて、図鑑や会話などで宇宙のことを話している子どもたち
(子どもたち一人ひとり興味が色々とあるので、テーマからプログラムにするときに一度セントラルアイデアという形で概念に戻しています)
②地域性…流山は、近くにJAXAやカブリ数物連携宇宙機構もあり、子どもたちも普段から親しみやすい
③保護者様の願い…保護者様アンケートで継続的に多くの方からご希望がある
④スタッフの強み…工学系を得意とするスタッフや、東京理科大学で宇宙を研究するスタッフがいる
です。
子どもが大人になり生きる社会は、今よりももっとVUCA社会になるため、将来子どもたちは自分自身で課題解決をするために「目的に合せた学び方を見つける力※1」が必要となります。
答えのない課題解決には課題を自分事化することが大切のため、テーマが関係者(子ども/スタッフ/保護者様/地域の大人)のハブとなり、自主的に関わり合いが持てるようになってくれればと考えています。
※1 2017年オックスフォード大学マイケル・オズボーン教授により提唱された概念「戦略的学習力」をcommonが言い換えた力。論文「未来の雇用」で120あるスキルのうち必要なスキル第1位。
今回の宇宙マスターは…
探究学習プログラムcommontimeは学期毎に1テーマづつ実施されています。最初の週にはテーマに合わせた大人がマスターとして登場します。その理由は、テーマに関係ある大人の姿を子どもたちに「パーツモデル※2」として原体験して欲しいという願いがあるからです。
これは小学生だけでなく中学高校生にもよく起こりがちがですが、今の勉強が入試以外に何に繋がっているのか分からないということがあります。 そうならないために子どもの頃にその先の存在に触れておくことが親子共に大切だと考えています。(伝記が教育によい言われる理由もこのためです)
さて、今回の宇宙マスターは、commonスタッフでもあり、東京理科大学で宇宙を研究し、来年度から国の宇宙開発関係機関で働く櫻庭さんでした。
櫻庭さんがマスターとして子どもたちの前に来て頂いた時には、アメリカでのローバー(小惑星探査機)の大会出場の経験や、月の住居など宇宙にまつわるお話をふんだんにして頂きました。それに加えて、中学生の時に宇宙に関わる仕事を志し、実際に夢を叶えたからこそできる「夢を諦めずに追いかけていれば、きっと素敵な仲間に出会える」と熱意も伝えて頂きました。
このようにマスター回では、テーマのここだけでなく、それに向き合う姿勢や経緯も同じ位大切にしています。
これはcommontimeでセントラルアイデアと言われ、そのテーマをより俯瞰し抽象的にしたときに、子どもたちに触れて欲しい考え方として毎回議論され決められているものです。
※2 ロールモデルはその人を全体的に参考にすることですが、パーツモデルとは「この人のこの部分は参考にしよう」という概念
今回のcommontime宇宙マスターの櫻庭さんは、commonのyoutube企画「common studio~私たちの小学生時代~」でも詳しくインタビューしています。
櫻庭さんの小学生時代や夢を諦めない力についてご興味ある方ははぜひご覧ください。
月曜日:共存・協力「みんな違ってみんないい」
月曜日の視点は、その時のテーマに合わせて設定するフリー視点の曜日で、今学期は「共存・協力」に設定しました。
宇宙開発についてマスターや専門家とディスカッションしていく中で、宇宙開発は異なるバックグラウンドを持った人たちが「一人一人が主人公で多くの人々が協力しているからできること」なのが分かってきました。
そのため、子どもたちにも「社会には様々なひとがいることを感じ、それぞれの良さや共に生きるためにどうするか」を感じて欲しいと考えて、月曜日のcommontimeの視点は「共存・協力」としました。
第2週では、国際宇宙ステーションでは宇宙飛行士たちがどのような生活をしているかをDVDを見、実際の宇宙飛行士から協力することの大切さを学びました。
次の週からは「目指せ!宇宙飛行士」という目的で、グループごとに様々なゲームを通してコミュニケーションの難しさと楽しさを体験しました。具体的には、出されたお題に対してお互い見ずにペアで1つの絵を完成させる「お絵描きコラボ」や、言いかたや表情での情報伝達を楽しむ「はぁっていうゲーム」など5つ以上のコミュニケーションゲームを楽しみ、その中で尊重や協力などを体験的に学びました。
グループで取り組むことも多く、その時のリーダーは希望者で順番に回していく方法をとりました。これは実際の宇宙飛行士の訓練でもリーダーを回して、リーダーとリーダーを支える側の両方を経験するアプローチから取り入れました。
保護者様との学びの共有会でもあるWelcome common Dayでは、子どもたちがお父さんお母さんとにぜひ取組んで欲しいゲームを選んで体験してもらい、当日は皆様大盛り上がりでした。
火曜日:アート「地球の外で暮らすには?~太陽系で家を建てよう~」
マスターの櫻庭さんの夢である月での家づくりにならって、火曜日では「太陽系惑星の家の模型づくり」にグループで取り組みました。
まずは、それぞれの星の特徴を調べ、そこから出てきた知識や疑問を「アイデアのタネ」と称し、家を作るときにはどんなことが必要になるかを関挙げていきました。ここでは、何が正しい知識かではなく、デザイン思考の何が必要かを考えるプロセスを特に大切にしました。子どもたちからは「水星は昼と夜の温度差が激しいけど、どうしたらいいんだろう?」「星に季節はあるんだろうか?」などの多くのタネが湧いてきました。
次に、家(模型)を制作するための設計図づくりです。いきなり設計図を描くことはできないので、日本や世界の異なる気候にある家をみんなで見て、特徴を掴み、それぞれの星の特徴にどこが合うかを話し合いました。また、設計図は平面図でけでなく立体図(色々な角度から見る視点)があります。それに慣れるために、commonで考えた立面図を子どもたちが見て、カプラ※3で再現するゲームなどを取り入れ、楽しく空間把握能力を養いました。
そして、いよいよ制作ですが5週間かけて子どもたちは惑星の家づくりに取り組みました。
制作の初期段階では、「今日は土台だけ作ろう」「ここまで頑張ろう」と目標を決めて計画性を持って進めるチームや、「先に土台から作り、組み立てた方がやりやすい」などチームで作戦会議する姿がとても印象的でした。
また、制作過程では当然意見がぶつかることもあります。そんなときは、高学年がいるチームでは高学年がリーダーシップを発揮し、そうでないチームはスタッフがサポートしながらも自分たちで状況を整理し話し合い、前に進めていて、そんな子どもたちの姿はとても頼もしかったです。
制作した後は、保護者様との学びの共有の場のWelcome common Dayにて展示しました。展示には、模型だけではなく、各チームの制作過程と担当スタッフのコメントを入れ、プロセスにも焦点を当てました。
※3カプラは企業等のチームビルディング研修などでも活用されることもあり、創造性だけでなく協働性を育む目的でも使われたりします。
水曜日:サイエンス「Mars Trek 火星探査Mission」
水曜日サイエンスでは「Mars Trek火星探査Mission」という視点で、宇宙開発について多くの体験と学びを提供しました。
今回の最終Missionは火星探査用(衛星、ローバー、地中探査、サンプルリターン)の自分たちの探査機を作ってもらうのですが、最初は、①地球と火星 ②NASAの火星探査の実際 ③4週間で実施する4つのミッションについて話をしました。特に、②ではNASAで公開しているムービーなどを解説しながら火星探査への興味を引き出し、これから始める③のミッションとの関連性を意識させながら、ミッションの内容や狙いを詳しく伝えました。特に最後に隣の部屋から火星探査ドローンが登場したときには歓声が上がっていました。
Mission①「衛星画像を解析せよ!」
火星には水が存在した証拠(河川によって形成された地形や、川が流れたような跡)が多くの残っています。そのため、google earthを使って、ナイル川、アマゾン川、グランドキャニオン、砂漠などを観察し、水が流れている場所(流れていたであろう場所)の地形の特徴を知り、それをもとに火星の衛星画像をみんなで観察し、議論しました。また、定点観察についても大切なため、チームで2枚の定点写真を撮影し、それをプログラミング言語scratchを使って、2コマアニメにしました。2コマアニメにするとほんの小さな違いでもはっきりと分かることなどを体感してもらいました。
Mission②「ローバーを誘導せよ!」
学びのポイントとしては「火星探査機の歴史を知る」と「チームで協力してローバーを正確に制御する」の2つ。まず最初にNASAの火星探査のページから1975年のviking1号から現在も活動中のローバーまでの探査の歴史を紹介。続いて、ローバーの誘導実験を体験してもらうために、障害物のクレーターを避けながら最適なルートを選択し、目的地まで正確にローバーを誘導するチームチャレンジをしてもらいました。そこでは、ローバーに命令を出す人、ローバーの状況を確認する人、ローバーの進路を考えて指示する人など、それぞれが自然と役割分担しながら、「あっ、行き過ぎ!」「次は右だよ、右」「よっしゃー」などと声を掛け合い、楽しくチャレンジをしてくれたようです。
Mission③「Mars Trek 火星探査ミッション」
水曜「Mars Trek 火星探査ミッション」の3つ目のミッション「データを収集して分析せよ」の活動について簡単にご紹介します。
学びのポイントとしては「センサーとは?」と「データを読み取る」の2つ。まず最初に20年もののaiboを使って、どんな目的でセンサーが付いていて、どのように活用されているのかを紹介。続いて、LEGOMindstormで作ってカラーセンサーを搭載したローバーを使って、動きながらカラーセンサーからの情報をPCで収集し、そのデータの解析方法などをみんなで考えました。さらに、基本的なことを理解したところで、「国旗当てクイズ」をしました。出題者はA3サイズで印刷された国旗から1つを選び、ローバーを動かしながら国旗のカラーデータを収集します。その後、解答者が送られてきたデータを読み解き、どの国旗なのかを当てるというシンプルなクイズですが、数値やグラフをもとに国旗という図案を予測するのは難しくもあり楽しくもある体験だったようで、「3,4,3,4,5だから…」「どれだろう…」「きっとセネガルだ!」などと楽しそうに取り組んでいました。
Mission④「ドローンで上空から探査せよ」
学びのポイントとしては「ドローンの飛行の仕組み」と「ドローン操作」の2つ。まずはドローン担当のかずま先生が飛行の実演と搭載されているセンサーの種類とその機能について、1年生でもわかるように伝えてくれました。その後は操縦体験に!初めてのドローン操縦でしたが、そもそもドローンは高度や機体の傾き、そしてモーターの回転などを自分で制御して、常に自分で姿勢を正しくすることができるため、男女問わず、上手に操縦することができました。特に、女の子たちの操縦がとてもうまく、目標地点にきれいに着陸させていた子が多かったのが印象的でした。
4つのMissionを終えた後は、子どもたちはチームでチャレンジする探査機(ローバー3チーム、ドローン9チーム、地中探査2チーム)を、LEGO technicを使って制作致しました。
木曜日:サイエンス「Space Journey宇宙旅行ミッション」
木曜日サイエンスでは「Space Journey宇宙旅行ミッション」という視点で、地球から近い宇宙空間について多くの体験と学びを提供しました。
今回の最終Missionは「2075年、ついに宇宙エレベーターが完成した」という設定で、宇宙リゾートcommonを考えてもらいますが、最初は①宇宙はどこから? ②4週間で実施する4つのミッションについて ③もし地球が1cmだったら について活動をしました。①では国際宇宙ステーションの写真をもとに、地球儀とカメラを使って、国際宇宙ステーションは地球からどのくらいの位置で飛んでいるのかを探ったり、③ではおおたかの森S.Cの広場に出て、太陽の大きさや距離を体感してもう実験を行いました。
Mission①「金星と地球の8年間をシミュレーション」
学びのポイントとしては「宇宙は算数・数学で計算できる」「金星と地球は太陽の周りをまわっている」という2点で、国立天文台のmitakaというシミュレーションソフトを使って、今夜の星空観察や太陽系のシミュレーションを見た後に、金星と地球の8年間の動きを釘と糸を使った糸かけアートで天体現象をシミュレーションすることにしました。今週のグループが2年分(外側の釘を2周)を糸かけしたので、次週のグループは3年目と4年目をかけてもらい、4週間かけて、子どもたちメンバー全員で8年間のシミュレーションを完成させました。
Mission②「アルコールロケット実験」
学びのポイントとしては「ロケットの仕組み」「アルコールを燃やすとどうなるのか?」という2つ。まず先日、成功したスペースx社のスペースシップのブースター空中キャッチの映像を紹介しながら、ロケットの仕組みについて考えました。その後は、アルコールを燃料としたロケット発射実験へ。アルコールも液体のときと気体のときでは燃焼の様子が異なること知ったり、アルミ缶と紙コップを使ったアルコールロケット発射実験では、どうしたら同じ燃料の量で遠くまで飛ばすことができるかなどを試行錯誤しました。
Mission③「ソーラーパネルを開け!」
学びのポイントとしては「遊びだと思われていたものが宇宙開発のヒントになった」ということ。まず最初にNASAの研究者が高校生の時に神戸でホームステイしたことをきっかけに「折り紙」を知り、そこに数学的な興味を持ち、その後にNASAでソーラーパネルの開発に携わっていくという実話を動画で紹介しました。その後、「小さくたたんで、大きく広げる」ということをA4コピー用紙を使って、それぞれでチャレンジしてもらいました。
Mission④「GPSで場所を探せ!」
学びのポイントとしては「宇宙空間の利用」と「GPSの仕組み」の2つ。GPSの仕組みは、流山の地図を使い、「熊野神社から5」「おおぐろの森小から2」「野々下水辺公園から3」いうこと3つの条件から1か所を特定できることを体感した後に、五十音表を使って、「GPS暗号クイズ」をやりました。子どもたちは1つ、2つと円を重ねて、場所が絞られていくと、3つ目を置くころには「きっとここかな?」と予測をつけるところまでできるようになり、最後の円を置いた瞬間に「やった」という声も聞こえてきました。そして、ミッションの仕上げとして、自分たちにもクイズを作ってもらい、理解を深めてもらいました。
4つのMissionを終えた後は、最終Mission「宇宙リゾートcommonを開発せよ!」にチャレンジし、それぞれのチームで宇宙リゾート施設(リゾート、ホテル客室、宇宙エレベータの終点駅)の開発にLEGOを使って開発しました。
金曜日:キャリア「宇宙のおしごと」
金曜日はキャリアの曜日。宇宙のお仕事とというと宇宙飛行士?と連想してしますが、それ以外にも多くのお仕事があります。今学期は、5名の宇宙関連のお仕事をされている皆様にお越し頂き、色々とお話しを伺いました。
1人目は、マスターとしても登場してい頂いた櫻庭さんです。金曜日のテーマがキャリアというこもあり、櫻庭さんには櫻庭さんの夢を追いかける姿勢についてお話しを伺いました。櫻庭さんご自身は宇宙の軌道計算など苦手な分野もあったそうですが、ロボットを制作するなど得意なことを活かして夢を追いかけてきたお話しをして頂き、「得意や、好き、憧れの人を大切にして欲しい」というメッセージを頂きました。
2人目は、千葉市科学館勤務の志野さんをお迎えいたしました。
志野さんが星に興味を持ったきっかけや、どうして今の仕事をしているかなどを教えていただきました。
commonの子どもたちと同じくらいの年齢の際に、流れ星に興味を持ったことがきっかけだそうです。
また、学生時代のご経験から、難しいことを分かりやすく伝えたいと思われ、普及活動に力を入れていているそうです。
3人目は、株式会社Oceanic Constellations 本田さんにお越しいただき宇宙に関係する仕事を教えてもらいました。
「宇宙飛行士に1時間、仕事を依頼する場合どのくらいの費用がかかるのかなどを例に取り上げ、「仕事は、ただ困りごとを解決するだけではなく、解決したうえでお金いただくようにしなければならない」という仕事の基本を子どもたちは学んでいました。
4、5人目は、株式会社DigitalBlast 堀口さん 加治佐さんにお越しいただき、どんな仕事をしているのかを子どもたちに伝えて頂きました。
堀口さんからは、宇宙での実験装置開発や宇宙人の調査などみんなに「宇宙を使ってもらう」ための仕事をしていると教えていただきました。これまで見たことのない実験装置の動画なども見て、子どもたちは興味津々な様子でした。
加治佐さんからは、記者の仕事を教えていただきました。
記者の仕事は、いろいろな出来事を見たり、人に面白い話を聞いたりしてたくさんの人に教えることと学びました。
仕事の楽しいことや辛いことをはじめ、子どもたちに4つの大切なメッセージを頂きました。
・いろいろなことを勉強する。
・いろいろなことにチャレンジする。
・友だちと遊ぶ!話す。
・体を動かす。
この様に子どもたちは、多くの宇宙に関係する大人たちから、宇宙のお仕事の幅広さだけでなく、仕事に向き合う姿勢や楽しみ方も一緒に学びました。
今学期も、子どもたちの姿を見ながら一緒に貴重な学びをつくることができました。
ご協力を頂きました皆様本当にありがとうございました。